スプーンの裏をみてみると?
私たちが普段使っているスプーンやフォークの裏側をよく見てみると、「STAINLESS STEEL」に続いて「18-8」や「18-10」といった数字が刻まれていることがあります。この数字は、実はその食器に使われているステンレス鋼の成分を示しています。
刻まれている数字の意味
ステンレス鋼は主成分の鉄(Fe)に対して、さびにくさ(=耐食性)に効果をもつクロム(Cr)が10.5%以上含まれている必要があります。加えて、ニッケル(Ni)の含有量によって、性質が大きく変わります。数字は主な添加元素である、クロム(Cr)とニッケル(Ni)の含有量を示しています。
例えば「18-8」と刻まれている場合、クロム(Cr)が18%、ニッケル(Ni)が8%含まれていることを表しています。
- クロム(Cr)はステンレス鋼の錆びにくさを決める主要元素
- ニッケル(Ni)は耐食性の安定化や加工性の向上に寄与
一般的なカトラリーでは「18-8」や「18-10」が多く、これはSUS304と呼ばれる種類のステンレス鋼に相当します。食品に触れてもさびない耐食性や価格、加工のしやすさといったバランスから、最もよく使われるステンレス鋼です。
→ステンレス鋼の分類と種類 …記事作成中
ステンレス鋼の主な成分と役割
ステンレス鋼は、鉄をベースに様々な元素を加えることで、耐食性・強度・加工性をコントロールしています。主要な成分とその役割を紹介します。
鉄(Fe)
- ステンレス鋼の基本成分で、70%~80%含まれる。
- 強度を支える骨格となる。
- 単体では錆びやすいが、合金元素を加えることで性能が大きく向上する。
クロム(Cr)
- ステンレス鋼が耐食性を発揮するために最も重要な元素。
- 10.5%以上含有すると表面に皮膜を形成し、さびを防ぐ。
- 含有量が多いほど耐食性が向上する。
→ステンレス鋼がさびない理由とは? …記事作成中
ニッケル(Ni)
- オーステナイト組織を安定化させ、耐食性や加工性を向上。
- 塩分や酸性環境でも腐食を抑える効果がある。
- 加工がしやすく、食器や調理器具に多用される。
- 比較的高価であり、含有量が増えると製品も高価になる。
→ステンレス鋼は磁石につかない?ステンレス鋼の種類と磁性 …記事作成中
モリブデン(Mo)
- 海水や塩分を含む環境での耐食性をさらに高める。
- 孔食(局部的な腐食)や隙間腐食に強い。
- 「18-10」などに加えられることがあり、SUS316に代表される。
炭素(C)
- 鋼の強度や硬度を高める。
- ただし多すぎると耐食性が低下するため、ステンレス鋼では割合を低く抑える。
マンガン(Mn)
- 脱酸剤として使用されるほか、ニッケルの代替として部分的に利用される。
- オーステナイト系ステンレス鋼の組織安定にも寄与。
カトラリーの裏に刻まれた数字は、単なる記号ではなく「食器の性能を決める配合比率」を示しています。毎日の食卓に並ぶスプーンにも、実は奥深い材料科学が隠れているのです。

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